Artist Interview : 阿目虎南 燦然CAMP舞踏公演「舞踏山月記」
2019年に大駱駝艦から独立後、ソロ公演の開催をはじめ、グループワークの演出、劇場以外での実践、海外での武者修行、コロナ禍での配信公演、異分野のアーティストたちを迎えての演出など、多様な実践を企画しては、その場に放り込まれるようにして踊ってきたと話す燦然CAMP主宰・阿目虎南。
今回の演出・振付・出演作品「舞踏山月記」について、どのように向き合っているだろうか。
—- 題材のなかで、タイトルにもある中島敦「山月記」は高校の教科書にも掲載されています。題材を明記した作品制作は初の試みとなりますが、「山月記」を選んだ理由は?また、同様にモチーフとしているという「人虎伝」についてもお聞かせください。
阿目
「人虎伝」は「山月記」の元になっていることから、私が「山月記」に言及するにあたって必要な作品でした。話は全然違うのですが、多角的な視座を確保するために、「人虎伝」も加えました。「山月記」をメインのモチーフにしたのは、数年前ある方にあるプロジェクトを提案頂いた際、題材として私に充てられたのが始まりです。馴染みのある小説でしたが、それ以来常に頭の隅で断片を練っていました。
—- 数年後しの作品制作となるわけですね。
阿目
そういうことになりますね、寅年に虎が虎を。
—- 作品制作も架橋を迎えていることと思いますが、状況はどうですか?
阿目
折角ポーランドツアーの時差ボケで朝方になったのに、ここ数日でまた夜型に戻りました。毎日朝寝て昼に起きてそれからずっと稽古です。一日二回は通し稽古をしていて、いい感じに身体がガタついてきました。また今回、小説をモチーフとした作品のクリエイションということで、これまでとはまた違う課題が出てきています。
—- その課題とはどのような?また、制作過程についてもお聞かせください。
阿目
まず、作品が書かれた背景について調べたり、私なりの理解を深めるのは大いに捗りました。次に、物語を舞踏化するにあたり、抽出する点を絞ったり逆に俯瞰して捉える作業に入りました。ここからの過程は実際に動きながらですね。説明的及び表現的になることへの忌避を自分に課していたので、物語を裏返したり斜めから観るような仕方での再解釈を試みました。
—- ただ物語を忠実に再現するという作品ではないのですね。それはどういった意図で?
阿目
燦然CAMPの舞踏公演だからというと乱暴ですが、作品に対する舞踏家なりの仁義の切り方として、なぞるよりも、私としてありながらその状態に身を置くことを選びました。同時に、舞台上演における様々な制約を伴い、再解釈した物語とどう折り合いをつけるか。ときに制約に身体を預けることで足場を確保しながら、物語との距離を綿密に調整しています。
—- 制約に助けられるということもある、寧ろ必要不可欠なものと捉えているようです。今回の制約とは具体的にどのようなものでしょう。
阿目
これまでも、物理的な条件や身体言語の異なる他者への振り付けなど、拡張の方向での課題は常にあり、エキサイティングな環境として向き合ってきました。制約に関しては、舞台上演であること、客席のデザイン、予め設定した舞台装置は勿論、今回は身体性の一致もそのひとつとして挙げられるでしょう。たとえば、私と共通の身体言語を持つダンサー(大駱駝艦の谷口舞さん)とのデュオ公演ということ。往々にして、振付に対しすんなり合点がいくんですね。勿論、性差、体格差に加え踊り方も違うのですが、景色が直ぐに一致してしまう。ある見方では重要なことですが、今回の趣旨として、個体差や質感、身の置かれている次元をより明確化して切り分ける方針で作り直しています。
—- 最後に一言お願いします。
今回、様々な文脈における「変容」を軸に、時間と空間を展開していきます。すごいものを見せますよ、視覚的にというか、モノとして。私がこれまで手掛けた作品のなかで、随一の密度です。是非劇場に足を運んでください。
燦然CAMP舞踏公演
Sanzen CAMP Butoh Show
舞踏山月記
BUTOH SANGETSUKI
2022年12月 2㈮19:30※1 3㈯14:00 / 18:00※2 4㈰13:00 / 17:00
※1 主宰によるアフタートーク
※2 アフタートークゲスト:近藤秀實(多摩美術大学名誉教授)
演出・振付・美術 阿目虎南
Choreography and artistic direction : Conan Amok
出演 谷口舞(大駱駝艦) 阿目虎南
Cast : Mai Taniguchi(Dairakudakan) Conan Amok
音楽 網田破裂音
Composer : Hurleyzone Amida
衣装 柴崎麻弥
Costume : Maya Shibasaki
舞台監督 小川陽子
Stage manager : Yoko Ogawa
音響 飯塚大周
Sound : Taishu lizuka
照明 謝花翔陽
Lighting : Shoyo Jahana
企画制作 燦然CAMP
Producer : Sanzen CAMP
宣伝写真 松田純一
Photo : Junichi Matsuda
宣伝美術 Arts Inc.
Design : Arts lnc.
主催 燦然CAMP
Organizer : Sanzen CAMP
協力 A5yl/燦然光芒 kohsetsu,24/7
Cooperation : A5yl/Sanzen KOBO kohsetsu,24/7
11/1㈫ チケット発売開始
チケット料金(全席自由・税込)
前売 ¥3000 当日券 ¥3000
※未就学児入場不可
チケット取り扱い
Ticket reservation
ご予約(カンフェティ)
http://confetti-web.com/sanzencamp/
カンフェティチケットセンター(0120-240-540 通話料無料・受付時間平日10時~18時)
会場 シアター・バビロンの流れのほとりにて
〒114-0003 東京都北区豊島7-26-19 ※劇場前は駐車禁止
http://www.tokyobabylon.org/babylon02.html
最寄り駅
東京メトロ南北線「王子神谷駅」
※駒込駅から3駅、王子駅から1駅
1. 庚申通り商店街を直進します。(約10分)
2. 商店街が途切れてからも道なりに進みます。(約2分)
3. 左手に豊島七丁目児童遊園が見えたら、民家を正面に見て右に曲がります。
「正気と狂気。表層に浮かぶすがたと内燃する気質とは分かち難く、意識は濃淡をもって織り交じっている。それらは漂泊しながら互いにもつれ、揺らぎ、境界線上を往還する。問いは彼方から投げ掛けられた。私は俯瞰と凝視、積極的誤読を以て此処に対峙せねばならない」
これまで舞踏作品をはじめ、他ジャンルとの協働など幅広い上演を通して積極的に領野開拓とアップデートを進めてきた燦然CAMP。
本作は中島敦「山月記」 李景亮「人虎伝」等の小説をモチーフとして、「変容のグラデーション」をテーマに構成されます。この歴史的文学作品に予てからシンパシーを抱き、現代における自身の実感を強く投影した舞踏家が独自の視点で描く「舞踏山月記」。
行間に潜む事象を発掘・抽出し、生成と発酵、そして寄り道というプロセスの果てに立ちのぼる、緊張感のある風景。その感触と展開を、どうぞご堪能ください。
阿目 虎南(あもく・こなん)
2008-2019 大駱駝艦に所属、麿赤兒に師事。独立後、ソロ活動を経て2021- 燦然CAMPを設立。2022- A5yl/燦然光芒(あじーる・さんぜんこうぼう)芸術監督に就任。以降、同スペースにて自身の舞踏ソロ「Glowing Ember」シリーズを毎月上演中。国内での公演・WSの企画運営、TV・映画・MV・舞台出演に加え、南米コロンビアでの単独舞踏公演ツアー開催やダンスフェスティバル参加など、海外へ向けた活動にも取り組む。また、美術家としても出展多数。Dance Base Yokohama 新型コロナウイルスを受けての支援アーティスト(2020)。大道芸人公認制度「ヘブンアーティスト」ライセンス取得(2021)
谷口 舞(大駱駝艦)
大駱駝艦に所属、麿赤兒に師事。
阿目虎南との共同振付として、
文化庁委託事業 令和二年度 次世代の文化を創造する新進芸術家育成事業 現代舞踊新進芸術家育成アウトリーチProject「劇場外での実践と地域へのコミットメント」事業「大馬車道 虎の舞」@みなとみらい線馬車道駅 2021)など多数携わる。
Sanity and madness. The figure in floating on the surface and a temperament that burns internally, you know they cannot be split. Consciousness mixes with each other with the gradation. they drift. entangled with each other,fluctuate,move over boundaries. The question was posed from afar so I look it with the perspective. The most important stuff for me is confronting it while actively misreading.
Sanzen CAMP has been actively developing and updating its territory through a wide range of performances, including butoh works and collaborations with other genres.
This work is based on the motif of the novel, Nakajima Atsushi’s “Sangetsuki”, and is composed under the theme of “transformation gradation”. “Butoh Sangetsuki” is written from a unique perspective by a Conan Amok, the butoh artist who has had sympathy for this historical literary work for some time and strongly projects his own feelings in the present age.
A tense landscape that emerges at the end of the process of excavating and extracting phenomena hidden between the lines, creating and fermenting, and detouring. Please enjoy the feeling and development.
2022年 11月 都内某所にて
インタビュー/テキスト Arts Inc. 写真:松田純一