Artist lnterview:阿目虎南
2021年3月。麿赤兒率いる舞踏カンパニー・大駱駝艦より独立後、破竹の勢いで活動を続ける注目の舞踏家・阿目虎南が再び大きな一歩を踏み出した。
文化庁・現代舞踊協会主催 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業「アウトリーチプロジェクト: 劇場外での実践と地域へのコミットメント」http://www.gendaibuyou.or.jp/news/recruit/r20082500
に採択され、みなとみらい線 馬車道駅構内における初の舞踏「大馬車道駅 虎の舞」公演を開催。
このプロジェクトは、横浜高速鉄道株式会社をはじめ、ヨコハマ経済新聞、横浜コミュニティデザイン・ラボなどの協力を得て実現される。駅構内という極めてパブリックな空間に、非日常の展開を企てる阿目虎南に話を聞いた。
Arts lnc.(以下、A.)
よろしくお願いします。まず、今回の開催にあたっての経緯を伺えますか?
阿目虎南(以下、C.)
現在、2020年から感染拡大の一途を辿るコロナ・ウイルスの影響で 社会全体を通し、これまでの日常が大きく変革されています。
劇場空間での舞台観劇においてもまた、開催自体が危ぶまれる事態となり、私自身も企画の開催中止・延期などを余儀なくされました。これまで3回の延期を経て、今月末から予定されていたコロンビアでの公演・WSのツアー企画もとうとう開催を断念せざるを得なくなりました。蔓延し続けるウイルスとの共存は舞台芸術においてもきわめて重要な課題となっています。
試験的に無観客公演の配信なども試行し、文化芸術の灯火を守るために我々が出来ることを模索しました。そんななか、予てより興味を持っていたアウトリーチプロジェクトに採択されます。社会において我々はいま、いま何を為し得るか。都市部でのアウトリーチは、それが試される機会と考え 主催側やアウトリーチ先との入念なやり取りの上で企画実施に踏み切りました。
A.
今回の開催場所、コンセプトや内容についてお聞かせください。
C.
今回、私が選択した横浜エリアは、大劇場やホールをはじめ 多様な形態の文化施設があります。昨年完成したダンスハウス Dance Base Yokohamaなど、新たな取り組みへのサポートという点においても 文化芸術への理解・熱意を感じます。みなとみらい線においても、Creative Railway https://www.creativerailway.yokohama/ をはじめとした芸術を取り上げた企画が多岐にわたり開催されていて、鉄道会社としては良い意味で異質な印象を受けました。また、みなとみらい線は それぞれの駅が異なる建築家・コンセプトのもと手掛けられているという点もたいへん興味深く、私は今回の開催場所である馬車道駅の設計コンセプト「過去と未来の交差・融合」というテーマに特に惹き付けられました。「これまで」の日常やコミュニケーションの方法が パンデミックによって形を変えざるを得なくなり、到来する まだ見ぬ「これから」。しかしながら、これらは地続きで存在し、時間は止まることはない。こうした事象の交差点、日常と非日常との交差点に、我々はいま立っていると感じます。
また、今回のプロジェクトの概要である、普段自ら劇場に足を運ぶことのない方々へも広く間口を設けた上演であるということ。我々の展開する非日常が、人々の日常生活の通過点である駅構内で交差するとき。そこにささやかな祈りを添え、何かしらの火を心に灯せればと思います。
(2021.3月 都内某所 取材・文=Arts Inc.)